APQ100/640とQuestar3.5の比較(見え方など)
2017年の秋から2019年にかけての比較です。
◆Questarの光学テストについては下記の鈴木さんのサイトのcontentsの
 「光学テスト」→「マクストフ望遠鏡のテスト」を参照してください;
    ツァイス望遠鏡の展示室
 尚ロンキー縞の見方は下記が分かり易いです;
    ロンキー縞の見方と光学系の欠点

APQとクエスターの見え方比較9 (2019年2月2日)
この日は定例観望会でAPQ130/1000, APQ100/640とクエスター3.5を見比べました。
プレアデスや二重星団などの大きな散開星団を見て感じたことは、クエスターの視野の
背景の暗さが際立っていることでした。そのため星の輝きが綺麗に見えます。
この日は肉眼で3〜4等星が見えるくらいの空でした。APQは口径が大きいので空の明るさ
を拾っているのかもしれません。APQの低倍率では背景の明るさが目立ちました。
クエスター3.5は、このくらいの空の下で大きな散開星団を見ると、背景も暗く美しく見える
ようです(逆に大口径は背景が明るくなり美しさが減少する?)。
→小学校やコミュニティセンターでの観望会は市内や少し郊外など少し空が明るいので
 大きな散開星団はクエスターで見ると綺麗に見えます。

APQとクエスターの見え方比較8 (2018年7月31日)
 
非常にシーイングが良い日に土星や木星を見比べてみると、やはり口径の差は大きく、
APQの圧勝でした。クエスターの像もシャープなのですが、上げられる倍率がAPQに比べて
低いのでどうしても見劣りします。

APQとクエスターの見え方比較7 (2018年6月2日) 
 久しぶりにシーイングが良かったので木星を見比べました。
最初に倍率は、APQが160倍(A-4mm)、Questarが135倍(Brandon16mm)で見ました(Questar
内臓のバーロー使用)。見え方は、APQの方が明るく像の切れ味も非常にシャープでした。
明るさの差は口径の違いから妥当なところですが、APQで見えているものはQuestarでも
ほぼ見えています。
次に倍率を上げてみました。APQは1.4倍位のバーローレンズ(これは昔双眼装置用に
使っていたもの)を着けて約200倍。Questarはツァイスモノセントリック10mmにより216倍。
今度は見え方は像の明るさ以外は非常に接近しました。とういより縞模様はQuestarの方
がむしろ濃いような感じでした。ここでもAPQで見えているものはQuestarでもほぼ見えて
います。
その後土星と火星が昇ってきましたが、APQからは見えなかったのでQuestarで見ました。
今日はシーイングが良いのか土星も火星も良く見えました。特に火星は300倍でも十分
見えます。Questarは小さいのに非常に良く見える印象でしたこのくらい見えるなら低倍率の
広い視野を除けば手軽さを考えるとAPQが無くても十分ではないかと思ったりします。

ここで、4インチのアポとQuestar3.5の比較についてCloudy Nightsから紹介します;
「Having owned a Tak TSA 102 and a '64 QTZ Q3.5, side-by-sides over the period of nearly
a year led to me selling the TSA...not because of performance, mind you. The TSA, without
a doubt, is the nicest APO I have ever owned...bar none...and I've owned a few of the APs
and another Tak. Color correction is simply phenomenal. When compared to the Questar,
the TSA showed a very slight performance gain in both resolution and contrast. So, again,
in response to your question, "Is the view that much better?"...no. Where there is a striking
difference, however, is with regards to portability and self-containment. The Q won...hands
down. No more TSA and I've never looked back. - 4"apo versus Q 3.5より -」
これを読むと、"TSA showed a very slight performance gain in both resolution and contrast"
とあるように解像度やコントラストはTSA102の方が上だがその差は小さいとあります。これは
私が木星を見比べたときの感じと似ています。

上記の引用はQuestar3.5が健闘しているという例ですが、一方ではCloudy Nightsにはこういう
意見もあります;
「In a similar comparison a long time ago I compared a Zeiss APQ100/1000 to a Questar 3.5.
The Questar did not keep up. Planetary detail on Jupiter for example was hugely different.
I guess one would expect this. The obstructed Questar did not have the sharpness the APQ
had and it did not reveal as much in the way of contrast and detail. - by Mr. Kevin Barker -」
→APQ100/1000とQuestarの見え方には非常に大きな差がある。
「I owned a Questar when I got my little 92mm f/5 AP Stowaway. The Stowaway outperformed
the Questar on everything - deep sky, Sun, Moon, planets, and birds, and I didn't think it was a
very close fight. The Stowaway also provides almost a five degree field with a 35mm Panoptic,
something the little Q couldn't approach. - APOs vs. Questar - より」
→全ての点において92mm f/5 AP Stowawayが優れている。

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◆クエスターのミラーシフト(イメージシフト)について
 倍率を上げるとシフトが発生するのが分かります。大体、木星のサイズに
 近いくらいのシフト量のようでした。→ミラーシフトが全くない場合もあるので
 ミラーシフトが発生するかどうかは状況にもよるようです。
 クエスターのマニュアルP.76,77を見ると、
 3.5 inch imageshift informationという項目があり、クエスターのイメージシフト
 (ミラーシフト)の仕様が載っています。それによれば、
  Image shift is inherent in all Questar 3.5" unit and varies in the degree of shift
 (イメージシフトは全てのクエスター3.5インチに内在していて、シフト量は様々です)
 とあり、具体的には、
  ・Angular shift of 30 arc seconds maximum.(one Jupiter diameter)
 と書かれています。すなわち、木星の直径以下のシフト量なら仕様の範囲
 のようです(この仕様を超えるシフトがある場合は工場で調整要)。
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APQとクエスターの見え方比較6 (2017年12月27日)
寝る前にベランダから空を見ると大犬座が良く見えていたので、いくつかの
星団で見え方を比べました。今回は、APQの口径を6cm, 7cm, 8cm, 9cmに
絞れるように筒先につける絞りを作りました;

(左から、6cm, 7cm, 8cm, 9cm用の絞り)
今回見た天体は、NGC2362(τ星団), M41, M46, M50です。冬の真夜中
なので透明度は非常に良く、クエスターの見え方はAPQに負けないくらい
良く見えました。APQに6cmから順に絞りを付け替えてみると、8cmか9cm
のときの見え方がクエスターの見え方に近いようでした。6cmや7cmでは
クエスターの方が明るく良く見えます。前回の比較では7cm相当としましたが
今回は前回よりもクエスターの見え方が良いようです。今回は、クエスター
の筒先に付けていたプロテクションフィルターを外して見たので、その差かも
しれません。

APQとクエスターの見え方比較5 (2017年12月10日)
比較した主な天体は、アンドロメダ大星雲、オリオン大星雲、二重星団、亜鈴星雲、
リング星雲です。惑星状星雲以外はいずれも、APQを口径7cmに絞ったときの
見え方がクエスターの見え方そっくりでした(見えている星の明るさや星雲の
見え方)。クエスターの星像は周辺まで非常にシャープでAPQに良く似た見え方
です。スパイダーのないマクストフの見え方がアポクロマート屈折に似ていること
が良く分かります。この日、その他見たものは、M1, M35, M41, M79, NGC253
などです。南の空の方角は日立市の明かりがあり、NGC253はそらし眼でようやく
見える状況でした。北東は高萩市中心部の明かりがありますが、22時を越えると
暗くなってきます。東西と天頂方向はかなり暗いです。
マクストフとアポ屈折の比較には、
 TOA130 VS STF Mirage 180mm Deluxe
があります。これを読むとマストフとアポ屈折の口径の大よその対応が分かります。

APQとクエスターの見え方比較4 (2017年12月6日)
 今回はAPQの口径を絞り、クエスターとの見え方を比較しました。
 
 写真のようにAPQの筒先に7cmの穴のあいたマスクを付け、前回と同様に
 クエスターを横に並べて海王星付近を約50倍でサイドバイサイドに見ました。
 今回の空は透明度も良くかなり暗いです。
 →結果は、見えている星の明るさといい、視野の背景の暗さといい、星像といい、
  殆ど同じ見え方でした!
  すなわち、クエスターの低倍率(約50倍)での星の見え方は、APQの口径7cm
  に相当するようです。これは、MTFの説明とも合致するように思われます。
  ・・・ということは、低倍率では9cmのマクストフ光学系は約7cmのアポ屈折と同等?
    これを拡大すると、7インチ(18cm)のマクストフは低倍率では18*7/9=14cmの
    アポ屈折と同等ということになります。これは妥当でしょうか?

APQとクエスターの見え方比較3 (2017年12月2日)
 今夜は海王星について約50倍での見え方を比較しました。そらの条件は、月齢13.6
 の月があり、また南天側は町の明かりもあり、海王星が見える方向の肉眼最微光星
 (NELM)は2〜3等級でした。
 下の左側はAPQ100/640にA-25mm+2倍バローで約50倍で見たときのスケッチ。
 右側はクエスター3.5にブランドン24mmで約50倍で見たときのスケッチです。
 
 →これから分かるように、APQの背景は明るく、クエスターの背景は暗いですが、
  見えている星はAPQの方が明るくはっきり見えます。この日はクエスターでは
  9等星が見える限度でしたが、APQでは10等星まで見えていました。
  また、海王星の青もAPQの方がはっきり見えます。
  星像としてはどちらも周辺ま良いですが、APQは口径が大きく無遮蔽であること
  から、この見え方の違いは妥当だと思います。
   クエスターの日本語でのレビューは非常に少ないですが、クエスターの視野の背景
  が暗いという話は、ななつがたけ北天文台日記の中にも載っていました。そこでは
  「視野が真っ黒で対象が浮かび上がる」と述べられていました。
  また、海外でも「Sharp contrasty optics, pinpoint stars floating in a nice black background.
    On deep sky objects contrast is superb the background very dark quite stunning.」
  というような表現が見られます。

APQとクエスターの見え方比較2 (2017年11月28日)
以前から「クエスターはどのくらい見えるのか?」に興味がありました。3.5インチの複合光学系なので
光学理論的には同口径のアポ屈折に比べると相当不利ですが、実際入手して見てみると思っていた
以上に良く見えるというのが現在の率直な感想です。クエスターと他の望遠鏡の比較については、
国内では、昔の月刊天文に少し話が載っていたくらいでネットでは殆ど見当たりません。
海外ではCloudy Nightsでいろいろ議論されていて、下記は興味ある話題です;
Light Collection with Q3.5, 5 and 7
80mm triplet apo versus a 3.5 Questar
questar or telementor?
APOs vs. Questar

APQとクエスターの見え方比較1 (2017年11月13日)
土日は天気が良かったのでベランダにAPQ100/640とクエスター3.5を並べて見え方を比べました。
対象はちょうこくしつ座のNGC253とオリオン大星雲です。
(1)NGC253
 南天に低く日立市内の町明かりがあるのでこの対象は非常に微かにしか見えません。
 APQの方はA-25mmに2倍のバーローで51倍。クエスターの方はブランドン24mmで53倍と、
 ほぼ同倍率です。
 APQを覗くと視野が少し明るくNGC253を見えにくくしているようです。一方、クエスターの
 方はAPQに比べて視野が暗くNGC253が少し見やすいようでした。しかし、微光星については
 APQは10等星まで見えていました。
 結論としては町中では差があまりなく、山中などのほんとうに暗い空で比べる必要があるようです。
(2)オリオン大星雲
 使用したアイピース等は上記と同じです。見え方は、APQに比べてクエスターの視野はやや暗い
 ように見えます。これは口径差や副鏡の存在などから当然のように思われます。しかし、クエスター
 の視野は背景が非常に暗く、これが星雲の輝きを際立たせています。結果として、APQと遜色ない
 見え方となっています。トラぺジウムや微光星の見え方はAPQの方が良く見えますが、その差は
 非常に小さいようです。
→口径差や副鏡の存在などクエスターには不利な条件があるにもかかわらず、見え方の差が小さい
 ようです。月や地上の風景でも差は殆ど感じられませんでした。3.5インチの卓上型のコンパクトな
 望遠鏡でこれだけ見えるというのは素晴らしいです。



光学系の比較(MTF)
APQ100/640を無遮蔽の完全な光学系と仮定して、Questar3.5のMTFカーブを作成してみました。
Questar3.5の副鏡の直径を測ってみると27mmなので遮蔽率=27/89=30.3%=約30%です。
従って、下図のように、Questar3.5のMTFカーブは「口径10cmで遮蔽率30%のMTFカーブを横軸
の0.89で交わるように補正」したものです。これがAのカーブです。Bは無遮蔽の光学系でAの
カーブの中倍率以下の部分を近似したものです。これによるとBはD=70mm弱の無遮蔽光学系
になります。
→結論:Questar3.5のMTFカーブは、
        ・低倍率から中倍率近くでは無遮蔽の70mm弱と同等。
        ・高倍率側では無遮蔽の90mmとほぼ同等。
     ということが分かります。
  上記の遮蔽率30%は鏡筒の先端から覗いて計測した値ですが、マクストフ
  カセグレン望遠鏡の中にはアイピース側から測定した値が真の値となる
  ものがあります(例:BKMAK180のように副鏡のメッキ面の後ろに拡がった遮光が
  ついているタイプ→ネットにあったこちらのレポートを参照)。
  それで念のためこのレポートのようにアイピース側から副鏡を写してみました;
  →この結果でもQuestar3.5の遮蔽率は30%でした。