小口径望遠鏡によるシリウス伴星レポート集
作成:舟越 和己
1.スカイ&テレスコープ誌の2002年3月号から
In the March 2002 issue of Sky & Telescope, Sue French, a very practical double star observer,
tells how she was able to see Sirius B in her 4.1-inch apochromatic refractor. This observation,
while unusual, is not as rare as one might suppose. French states that Sirius B was 5".5 arc from
A. S.W. Burnham saw Sirius B in his 6-inch Clark refractor at a separation of 4".5 arc.
In 1954; '55 & '56, C.J. Smith saw Sirius B with a 6-inch f/17 Witherspoon refractor, sometimes with
the objective stopped down to 4 1/2-inches.
スカイ&テレスコープ誌の2002年3月号に、非常に経験に富んだ二重星観測者であるスー・フレンチ
が4.1インチのアポクロマート屈折でシリウスBをどのようにして見たかを述べている。この観測は通常
ではないが、他の人が思うほど珍しいものではない。フレンチは、シリウスBが(主星)Aから5".5離れ
ていたと述べている。S.W.バーナムは4".5の離角で彼の6インチクラーク屈折によりシリウスBを見た。
1954,55,56年にC.J.スミスは6インチf/17のウイザースプーン屈折で4.5インチまで口径を絞って
しばしばシリウスを見た。
2.2009年のCloudy Nightsより;
http://www.cloudynights.com/ubbthreads/showflat.php/Cat/0/Number/2872269/page/0/view/collap
sed/sb/5/o/all/fpart/1/vc/1
観測されたのは米国在住の日本人の方(T. Hommaさん)です。下記にその内容を日本語訳で紹介
します。シリウス主星を視野の外に出すことがポイントのようです。
「私はかねてから4インチ屈折でシリウス伴星にトライしていました。その離角は理論的には小望遠鏡
で見るのに十分広がっているので、観測できる毎夜チャレンジしていました。
2009年2月18日、19日に私は見ることができたと思います。(中略)
シリウスが視野(FOV)から離脱した後、数秒で小さくかすかな点が現れました。私はそれが再現できる
かどうかを見るために100回以上トライしました。私は90%の回数でかすかな点を見ることができま
した。
シーイングは非常に良いわけではありませんでした。トラペジウムのF星は見るのが難しかったが
(一応)見ることはできました。シリウスが視野(FOV)にあったときはかすかな点を見ることはできません
でした。(それでシリウスが視野から離れたとき)私はかすかな点が視野の外のシリウスからのある種
の反射と(最初は)考えていました。それで視野の背景を変えてみることにしました。私は最初は
双眼装置で観測していましたが、次に単眼(cyclops)に替えるなどしてアイピースを変更しました。
そして、全ての組み合わせでもその点を見ることができました。使用した器具は下記です;
望遠鏡:TSA-102S
ダイアゴナル:バーダーT-2プリズムダイアゴナル
双眼装置:バーダーマークV
アイピース:ZAO-II 10mm,6mm
バーローレンズ:A-P BARCON, TMB 1.8X(単眼モードのときのみ使用)
私は見たものをまだ100%確信していません。視野(FOV)の縁でかすかな点をキープできるように
追尾マウンティングで観測を繰り返す必要があります。
もしそれがシリウス伴星だったら、80mmの望遠鏡でそれを見ることができると思います。」
3.2011年のCloudy NightsのDouble Star ObservingにSirius B, the Pupの話題がありました;
http://www.cloudynights.com/ubbthreads/showflat.php/Cat/0/Board/double/Number/4817237/page
/1/view/collapsed/sb/5/o/o/fpart/all
この中のblbさんの話で”4インチ屈折でシリウス伴星を見た!”というのが載っていましたので下記
に紹介します(2011年11月。観測場所は米国ノースカロライナ州(緯度は北緯34°))
「私は4インチTV102屈折でM42の良い眺めを得るために遅くまで起きていてトラペジウムを見て
いました。そしてEとFが見えたり隠れたりしていたので、今夜はシリウス伴星を探そうと決心しました。
離角の感覚を得るために望遠鏡をリゲルに向け、その後シリウスに向けました。星が瞬いていた
ので、シリウスは4mmアイピースの220倍で荒れ狂っていました。荒れ狂ったシリウスで伴星を見る
チャンスはないので、私は倍率を下げました。20mmアイピースと2倍ショートバーローを使用して88倍
にしました。この倍率での眺めは素晴らしく非常に安定していました。伴星を求めてシリウスの周りを
そらし眼(averted vision)で数分間費やした後、突然それがいました。私がスケッチしている間の恐らく
5、6分間、私はシリウス伴星を見ました。その後、突然それが現れたときのように、伴星は数回去り、
短時間しか再び現れませんでした。十分安定したシーイングでは、それはより高い倍率で見ることが
容易になるでしょうが今夜はそうではありません。しかし、私の4インチTV102屈折でシリウス伴星を
見たことをはっきりと言うことができるのは良いニュースです。」
4. 2012年1月Cloudy Nightsより(4インチ屈折によるシリウス伴星の話)
Cloudy NightsのDouble Star Observingに「The Pup in the Tak FS102 NSV」という話題がありました
のでその内容を日本語で紹介します。これを書かれたErik Bakkerさんはオランダ在住とのことです。
「今夜は素晴らしく澄んでいて安定した空でした。シリウスの南中と共に、私の4インチをシリウス伴星
に立ち向かわせる時がやってきました。私はテレビューのビノビューにツァイス27mmアイピースを装着
しました。2xのコレクターはテレビュー2xBIGバローと共に使用していました。この組合せは驚くほど
鋭く明るい眺めでFS102では120倍となります。最初に私はリゲルBをチェックしました:これは易しく
非常に美しい眺めです。次に望遠鏡をトラペジウムに向けると、容易にEとFを分離しました。今度は
シリウスに向けます。シリウスAは美しい回折リングの集合に囲まれた完全に青白のエアリーディスク
に焦点が合いました。そのとき私は瞳を凝らして見ると、いくらもしないうちに伴星自身が現れました。
ちっぽけで、目立たなく、素晴らしい小さな星。伴星は明るく大きな主星に名状しがたい美の感覚を
付加しています。(赤道儀の)クロックドライブのスイッチを切ると伴星と共に移動する主星の驚くほど
素晴らしい眺めが見えました。このような美しさを見たことがありません。それを16インチで試して
みると同じように伴星を垣間見ることができました。しかし16インチの望遠鏡は1時間しか戸外に
出てなく、まだ安定した像を提供していませんでした。4インチの方はすでに2時間半戸外に出て
いて、シリウス含めて望遠鏡を向けたどんな星のディフラクションリングも完全でした。素晴らしい
冬空の下でのとても詩的な経験でした。」
http://www.cloudynights.com/ubbthreads/showflat.php/Cat/0/Number/5019536/page/0/view/
collapsed/sb/5/o/all/fpart/1
この文章を読むとよほどシーイングが良かったと思われます。”53 degrees north makes the Pup
appear low in the sky”とも書いてあるように北緯54°での分離は驚異的です。Erik Bakkerさんは
以前ポリマの分離の件でCloudy Nightで意見を交換したことがあります。クエスター7インチ他多数
の望遠鏡を所有されていて二重星の熟練した観測家です。
5.2011年9月のCloudy NightsのDouble Star Observingにまたシリウス伴星の話がありました
ので紹介します;
http://www.cloudynights.com/ubbthreads/showflat.php/Cat/0/Board/double/Number/4817237/
page/0/view/collapsed/sb/5/o/o/fpart/all
このスレットの終りの方です;
Last night sky conditions were excellent in Southern New England. I spied Sirius "through the trees"
from my deck location and decided to at least give a try to splitting it with my TV-85 at 100X. I noticed
through the eyepiece that, as Sirius neared one of the tree limbs, it got dimmer from being partially
blocked by a limb. After a few tries using this dimming "method", there it was--- Sirius B (the Pup!!).
I was able to do this again to make sure-- checking the position, etc. So I'm very excited that I've
FINALLY observed this star after a few years of trying!! My question is-- has anyone else ever tried
the "tree limb dimming method" to see the Pup?
→(米国コネチカット州の)南ニューイングランドの昨夜の空の条件は素晴らしかった。私はデッキから
”木を通して”シリウスを見つけ、私のTV-85の100倍でとにかく伴星を分離してみようと決心した。
私はアイピースを通して、シリウスが木の大枝の一つに接近したとき、シリウスが大枝により部分的
にブロックされ暗くなるのに気付きました。この(シリウスを)暗くする”手法”を何回か使用した後、
シリウスBがそこにいました。私は位置をチェックするなど確実にするため、これを再び行うことが
できました。数年のトライの後、遂にこの星(伴星)を見たことに非常に興奮しました"私の質問は、
”木の枝で暗くする方法”でシリウス伴星を見ようとした人が他にいるでしょうか?ということです。
6.2014年のCloudy NightsのAstrophotography and Sketchingに口径7cm屈折でシリウス伴星
を見たというのがありました。
http://www.cloudynights.com/ubbthreads/showflat.php/Cat/0/Number/6312366/page/0/
view/collapsed/sb/5/o/all/fpart/1
「私はAT72ED(72mm f/6アポ)で日曜の夜に観測していました。空はフロリダの観測で語り草になる
ような10/10(のシーイング)でした。
思いつきで私はシリウスを調べることを決めました。私がシリウスを調べ始めるとすぐ、私の注意を
向けさせようとするぎらぎらする光に何かがあるのに気付きました。案の定、シリウス伴星が見えたり
見えなくなったりしていました。私はいくつかのアイピースを試し、9mm Orion Expanseアイピースに
決めました。それはこの望遠鏡で48倍となります。シリウス伴星は、中位の暗さの青みがかった灰色
(medium-dark bluish grey)で、主星と伴星の間に明確に黒いものが何度も見えました。私は1時間半
ほどシリウス伴星が見え隠れするのを見ました。シリウス伴星を見るのを大いに助けたひとつには
月が非常に明るかったのがあったと思います。これは夕暮れの空がそうであるように、背景の空を
明るくし、シリウスの眩しい輝きを減少させるのに役立ちます。」
→最高のシーイングと月明かりがポイントのようです。フロリダなのでシリウスの高度も高いでしょう。