天体観測の古典を読む
A Cycle of Celestial Objects by Admiral William H. Smyth
2024年4月作成 舟越 和己
1Admiral William Henry Smyth (1788-1865)は、大英帝国海軍でAdmiral(大将位)に達し、
引退後に私設天文台の5.9インチ屈折望遠鏡で天体観測を行った人。
The Cycle of Celestial Objectsは、第1巻と第2巻があります。第1巻は一般的な天文学
に関するもので、第2巻はベッドフォードカタログと言い、星雲・星団、二重星等の観測記録
です(注)。単なる数字とデータのカタログではなく、読み物としても面白い解説になっていて
欧米では天体観測の古典として知られています。
(注)初版本(1844年 PARKER LONDON)の写真を載せます(2024年5月5日追記)。
ニューヨーク州の古書店から購入(これまで購入した本の中で最も高価な本となりました)。
CiNiiで検索すると日本の大学図書館には2010年のリプリント版が東大理学部図書館に、
1972年のマイクロプリントが名古屋大学図書館にあるのみです。
第1巻PROLEGOMENAと第2巻THE BEDFORD CATALOGUE
第2巻の表紙
→Cludy Nightsの中でのベッドフォードカタログについての議論を
紹介します。(2024年11月22日追記)
The Bedford Catalogue by WH Smyth
(ここで使われる記号について)
◆星雲、星団等を表すハ−シェルナンバー
→番号+H. + 分類のローマ数字で表されます。分類のローマ数字は下記を意味します;
I:明るい星雲 II:暗い星雲 IV:惑星上星雲VI:非常に凝縮した星団
(例)・43H.I. Virgins:おとめ座のソンブレロ星雲
・27H.IV. Hydra:うみへび座の木星状星雲
◆方位象限sf. ,sp. ,nf. ,np. の意味
◆二重星の明るさの表現について(2024年4月22日追記)
この本独特の表現があるので説明します。
例えば、オリオン座ベータ(リゲル)は、A1,pale yellow; B9,sapphire blueと書かれています。
ここで、A1, B9はAが主星でBが伴星を表しますが、A1, B9の数字1と9は何を意味するで
しょうか。⇒これはスミスが使用していた15cm屈折望遠鏡の見える最も暗い星の明るさの
段階を16としたときの明るさの段階を示しています。A1は1段階、B9は9段階。
15cmの極限等級を12等として、これを等級に変換すると、B9は9*12/16≒7.0等となります。
→原文のNotationの中で等級の表現について下記のように書かれています。(2024年11月22日追記)
「・・・ What, from this practice, I term the 16th magnitude, is the minimum visible of my powers
both in eye and instrument, and merely indicates a minute point that can be caught by glimpses,
when watching under favourable circumstances of atmosphere and telescope.」