Poor man's orthoscopic

Evolution of the Astronomical Eyepieceには、現在では使われていないアイピースが載っていて
面白い内容です。その中にSingle lens EyepieceとしてTOLLESというアイピースの説明がありました。
簡単に紹介しますと、下記のようです。
「単レンズアイピースの球面収差や色収差を解決する最初の試みとして19世紀半ばに米国のRobert
 B.Tollesという人が顕微鏡の対物レンズをsolid Huyghenianという形式に発展させた。デザインは
 横に長くレンズの曲率は2r1=3r2となっている。”poor man's orthoscopic"として知られるように
 アイレリーフは不幸にもゼロである。(Hastingsによって負のフリントアイチャップが付けられた
 のが、Hastingsアイピース)
 視野は約20度と狭いが透過率は非常に高い。もともとはf/30の望遠鏡用に作られておりf/10位の
 望遠鏡で使用すると球面収差が酷くなる。
 球面収差や色収差について改良された後期のTOLLESは、アイレリーフ0.3Feと確保され視野も35°
 に拡大された。BK7を使用したタイプについてGreenwoodがプロトタイプを作ったがf/15の望遠鏡
 に対してきちんと収差補正出来ている。」
 
  ↑TOLLES(1個のグラス・ブロックからなる。前面から1/3のところにあるミゾが視野絞り。
        ホイヘンス・ソリッドとも云う。) 

・TOLLESアイピースについて
(1)Gerald North 著「Observing the Moon (The modern astronomer's guide)」Cambridgeと
 いう本の中に下記の記述がありました;
 「The Tolles eyepiece is really a solid(one piece of glass)version of Huygenian eyepiece.
  The field of view is small(25-30°). Now obsolute,it also used to be a favourite of
  planetary observers, producing crisp and false-colour-free images with facal ratios
  down to about f/7.(現在では時代遅れだが惑星観測家の中ではf/7位迄の色収差のない鋭い
  イメージを好んで使われている)」→Tolles eyepieceが今でも使われているとは、英国らしい
  ですね。そう云えば著者は、Monocentric につてもThe best type of eyepiece for lunar and
  planetary observationと書いていました。
(2)A closer look at High magnificationsより
 「For maximum high power resolution or for splitting tough doubles I used either a 6mm
  solid Tolles eyepiece or modern 6mm Zeiss Abbe type orthoscopic or perhaps a 5mm
  Zeiss orthoscopic.(最高倍率の解像力や難しい二重星の分離では、私は6ミリのトーレ接眼鏡や
  6ミリZeiss アッベタイプオルソ叉は5ミリZeiss オルソを使います。)」
  →これらを読むとTolles eyepieceに興味が出てきます。モノセントリックが最近TMBから出たように
   最新の光学ガラスと設計技術でTolles eyepieceが見直されないかとも思いますが無理で
   しょうね。一般的な感覚ではTollesは過去の遺物、よほどの物好きにしか見られないでしょう。
(3)日本語の本では、小森幸正著「天体望遠鏡ガイドブック」(誠文堂新光社 昭和44年)に
   載っています。この本では、視界12°と書いてあります。

・TOLLESアイピースの自作について
   BAA(英国天文協会)ジャーナル(1987,98,1)のObserver's Forum(*)にTOLLESアイピースの作り方
   という記事がありました。アイピースの自作というのは珍しいですが非常に参考になる内容です。
   (天体望遠鏡の自作では鏡や対物レンズの自作までが主流でアイピースのレンズまで設計・製作
    する人は少ないのではないでしょうか)
   BK7 N/d 1.517642のGlass Blockをdiamond tubular drillでカットして円筒状にし視野絞り
   のミゾをつけ、円筒状の両端部分を凸レンズにしていく(カーボランダム#180から#600まで。
   その後ピッチ盤による研摩)。
   完成したアイピースは、同じような焦点距離のオルソを凌ぐ見え味だそうです。視野は狭いが
   高い透過率とハイコントラストが特長。惑星を見るのに極めて優秀なアイピースのようです。
   →この内容からするとオルソの代用(”poor man's orthoscopic")という言い方は不適切な
    ようです。
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