星見雑記帳 2022年1月〜

12月29日(木)
クエスターを経緯台にしておおいぬ座のM41,、τ星団(NGC2326)、冬のアビレオを見ました。
パンオプティック19mmは視野周辺までピンポイントの星像で素晴らしい眺め。クエスターで広角
で見れるアイピースとしては適しています。テレビューのアイピースはクエスターのファインダー
モードでもピントが合うので便利です。アイピースによってはファインダーモードでピントが合わない
のがあります。
パンオプティック19mmの欠点と言えばアイレリーフが短くメガネを取らないと視野全体が見えない
ことです、


12月27日(火)
軸外しニュートンの光学的性質についてさらに調べてみました。

光軸に平行な光線から成る波面(@)が放物面鏡に反射すると焦点に収束する
球面波面(A)となります。

上記のことは軸外しニュートンの場合も同じで光軸に平行な入射光の光路で焦点F
に集まります。アイピースで覗くと視野の中心の像になります。
一方、視野の中心から外れた像は斜めに入射する光から形成されます。斜めに入射する
光が放物面鏡に反射すると球面波面ではなく下記のようなS字型の波面となり収束します。
→この結果、ニュートン式望遠鏡の視野の周辺は「コマ収差」が現れます。
                 
一方、軸外しニュートンの波面は上記S字の上半分の形状になります。
→この結果、軸外しニュートンの視野の周辺は「非点収差」が現れます。
このため周辺像を最良焦点にしようとすると焦点面に傾きが生じます。フォーカサ―の
位置も少しシフト(下の図のBest image surface)。→ベストな像を得るためにはこの調整
が必要(角度で4〜5度)。


以上はTelescope Opticsより

ここで疑問点;
DGM Opticsの軸外しニュートン望遠鏡は上記補正をどう実現しているのでしょうか。
また、軸外しの放物面鏡はどうやって製作しているのでしょうか。
→ED Ting氏のTelescope ReviewにOff-axis mirrorについての記述があります;
https://www.scopereviews.com/page1f.html#3
DGM Optics's off-axis mirrors are cut, like a cookie cutter, out of a larger "parent" mirror.
If done correctly, one parent mirror can yield as many as four smaller off-axis mirrors.  
This is not as easy as it sounds.  First, you have to locate an exceptional mirrorof 16"
or so in diameter.  Then, you need the skill to cut them without stressing the glass.
→親の放物面鏡から切り出すようですが、これをストレスフリーに行うのは
 容易でないようです。

12月23日(金)
無遮蔽の反射について調べていたら軸外しニュートン反射というのが過去販売されて
いたというのが分かりました。
http://users.erols.com/dgmoptics/index_old.htm#unob
これは放物面鏡の一部を丸く切り出し軸外しニュートンにしたものですが、元になる鏡
があり切断できれば自作できそうです。
(12/25追記):Astronomy Magazineの2009年5月号にDGM Optics OA-3.6 off-axis
reflectorのレビュー記事があるので2009年頃は販売されていたということです。
  DGM Optics OA-3.6ATS off-axis reflector

この光学系についてはTelescope Opticsの下記に詳しく載っています;
https://www.telescope-optics.net/tilted3.htm

  Off-axis Newtonianの光路図(Telescope Opticsより) 親の放物面鏡の部分を使用。

これを読むとこの光学系は、視野の中心部はニュートン式と同じく無収差です(放物面鏡
の一部を使用しているので当然ですが)。
周辺はニュートン式ではコマ収差が現れるのに対し、この軸外しニュートンは非点収差
が現れます。Telescope Opticsではこのことが図や式を使って説明されています。また、
焦点面が少し傾くのでその分を調整するとベストな像が得られるとあります。
スポットダイアグラムは、4インチf/10の軸外しニュートンで中心から0.3度の調整前と調整後
の例が載っています。調整後の例を見るとかなり良さそうです。
視野の中心では無収差というのは、同じ無遮蔽のハーシェル式と比べた場合、利点です。

同じTelescope Opticsにハーシェル式反射が載っています。
https://www.telescope-optics.net/tilted2.htm

 ハーシェル式の派生型(ハーシェル・ニュートン)の光路図(Telescope Opticsより)

これを読むと、次のようなことが書いてあります(内外像やMTF図の部分はStar Testing
Astronomical Telescopeより)。
ハーシェル式反射は鏡が傾いているので中心でも非点収差が残ります。このため、中心で
焦点内外像は少し楕円形となり内像と外像は楕円の方向が直角になります(下図)。
これを出来るだけ小さくしようとすると非常に大きなF値となります。下の方の式にあるように
D=100mm,ζ=0.6, RMS波面精度ωa=λ/14(≒P-Vではλ/4、すなわちストレール値=80%)
ならばF=22.3が必要です。ストレール値80%はディフラクションリミテッドに達しているので
これで十分ですが、これをさらに2倍の精度RMS=λ/28(P-Vではλ/8, ストレー値=95%)に
するためにはF=28.3が必要です(口径10cmで3メートル近くの筒になるので現実的ではあり
ません。口径5cmでもRMS=λ/28(P-Vではλ/8)の波面精度を要求しようとするとF=22.4です)。
上記はζ=0.6を使用していますがζは下で説明しているように主鏡の傾きに関係する値です。
これを変えると傾きを小さくでき非点収差は小さくなりますが、斜鏡を入れるスペースとの関係
で制限があります。

 3/8λの非点収差(P-V値)

また、非点収差によるコントラストの低下は下記のMTF図のようになります。例えば
P-Vでλ/4の非点収差による波面収差ならば下の図の3/8λより少し良いレベル。

これを下記の中央遮蔽のMTFと比較すると25%遮蔽のコントラスト低下よりも少し
悪いように見えます。
→@ハーシェル式は無遮蔽だが中心で非点収差が残りコントラスト低下が発生。
  Aニュートン式は中心で無収差だが中央遮蔽によるコントラスト低下が発生。
どちらを取るかは非点収差の量と中央遮蔽の遮蔽率によります。



非点収差の波面誤差をRMSでωaに収めるための条件(口径と口径比)は、
         F=(D/128ωaζ2√24)^1/3.
ここで、ζは
"ζ is the relative distance in units of the primary focal length at which the ray reflected
from the mirror center breaks out of the path of incoming axial pencil"
です。すなわち、ミラーの中心から反射された光が入射光の経路から外れるとき焦点距離
からその距離(鏡から外れるまでの距離)を求める係数です。
例えば、D=100mm,ζ=0.6, ωa=λ/14(≒P-Vではλ/4、すなわちストレールレシオ=80%)
ならばF=22.3必要です。この時の鏡の傾きの角度はτ=1/(4ζF)により求めることができ
ます(単位はラジアン)。実際に角度を求めると、τ=1/(4*0.6*22.3)*180/π=1.07度となります。
D=50mm, ζ=0.6, ωa=λ/14(≒P-Vではλ/4)で計算すると、F=17.8となります。
実際にはコマ収差も少しある(RMS=λ/40)ので、トータルの波面誤差はRMS=λ/13.2と
なります。
以上はζ=0.6で計算しましたがミラーの傾きをもう少し小さくする(ζ=0.7等)波面誤差は
改善できるようですが、傾きを小さくし過ぎると斜鏡を付けるスペースが得られなくなります。
図133が始まる箇所
"but it does exceed this level in the best portion of the field (FIG. 133). ”
からの説明は不明点がありまだ理解できていません。

12月11日(日)
Amateur Telescope Making Volume 3が届きました。
この本のP.429〜P.436に
  "The Maksutov Lens Applied to Herschelian and Newtonian Telescopes"
というタイトルでマクストフ・ニュートンとマクストフ・ハーシェル設計の為の式などが
載っています。マクストフ・ハーシェルはマクストフ・ニュートンから半分以下の直径を
切り出したものなので同じ図で説明されています。ジャンクのマクストフ・ニュートンを
入手してメニスカスレンズと主鏡から直径半分以下の円を2個切り出せば口径が半分
以下の2つのマクストフ・ハーシェルが2つ出来ることになります。


12月9日(金)
昨夜は満月なので星はあまり見えませんでしたが、ニュートンのレプリカTAL-35に
ナグラー7mm(約20倍)を使ってベランダの手摺から星の見え方を確認しました。
シリウス付近を見ると視野周辺まで星像は良好でした。主鏡は小さいですがかなり
まともです。



12月1日(木)
MTFの話題(続き)

MTFチャートは、明暗(白黒)のバーの繰り返しパターンを対象にしていますが、1本の
バーや白を背景にした黒丸の識別はバーの繰り返しパターンと異なるようです。
その理由は、下の図のように、同じ線幅の、「白黒パターンの繰り返し」と「白を背景と
した1本のライン(孤立線)」を比較した場合、同じ線幅でも孤立線の方がより細い線を
見分けることができるからです。青空に1本の電線があるときかなり細い線でも見分け
られるのはこのためです。カシニ空隙は、孤立線に該当します。カシ二空隙が幅が狭い
にも関わらず小口径で見える理由はこの辺りにあると思います。
一方、孤立した黒丸は白黒パターンの繰り返しと似たように段々見えなくなります。
木星の衛星の影はこれに該当します。 



 これに関連する話題はJean Dragesco, High Resolution Astrophotography,
Cambrige, 1995 という本の中に、「理論的分解能と細かい孤立した詳細の関係」
という題で詳しく載っています。

■ホームページアップロードがFTPからSFTPに変更になったためアップロード
ソフトをFileZillaに変更したところ画像をアップロードしても表示されません。
原因は現在不明。→解消しました。今回ホームページ作成ソフトとアップロード
ソフトが分かれたため更新データが同期していなかった為のようでした。

11月28日(月)
月が見えていたのでLOMO Astele60マクストフグレゴリーとTAL-65ニュートン反射で
見比べました。どちらも良く見えますがTAL-65の方がシャープさが上のようです。
TAL-65はこれまでの観望会でも65mmという小口径にしては非常に良く見える望遠鏡
でした。付属のラムスデンアイピースも優秀です。この望遠鏡はTAL Alcor 65mm F7.7
という望遠鏡の後継機です。Alcor は作りも重厚でカラーも旧東独ツァイスの製品に似て
います。ソ連崩壊後、コストダウンのためTALの65mm反射は作りが簡素化されパッケージ
も木箱からホームセンターに置いてあるような段ボールの箱になりました。しかし、光学系
はAlcorと同じで優秀です。
  


  TAL-65のパッケージ(一見、ホームセンターで売っている
  粗悪な望遠鏡のように見えます)

11月27日(日)
アンチスパイダーマスク

反射望遠鏡で星を見ると斜鏡を支えるスパイダーによる回折が見えますがこれを
減少させるマスクについて
      http://serge.bertorello.free.fr/antiaigr/antiaigr.html
の中で具体的なマスクの例が載っています。かなり奇妙な形のマスクですが、これが
どの程度効果があるのか簡単なシミュレーションを行いました。
具体的には、マスクをつけたときの回折像の光の強度をExcelで確認してみました。
その方法は、開口に任意のマスクを付けたときの光の強度を近似的に求める
ために,開口を1mmの格子状に分割して各格子点からの回折光をExcelの表で
計算するというやり方です。
口径20cmの望遠鏡の場合、格子点の数は約3万点位になります。マスクを付けた
ときの計算は1mm間隔格子点からマスク部分を除去して行います。
下の図は1mm間隔の格子で描いたマスクです。1mm間隔では細かい所は表現できて
いない部分(小さな爪)もありますが概要は表現されています。


使用した式は開口の点を(ξ、η)、焦点面上の焦点近傍の点を(x, y)、焦点距離をf、
光の波長をλとするとき、cos(K(xξ+yη)/R)です。
但し、K=2π/λ、R=(f^2+x^2+y^2)^(1/2) 
焦点面上の焦点近傍の点(x, y)に対して、開口内の全ての格子点についてこの式を
計算し、ξ、ηについての総和(注)の二乗を求めると、
これが点(x, y)での回折像の光の強度になります。(x, y)の値を変えることにより回折像
の光の強度分布が求まります。


シミュレーション結果

シミュレーション結果の説明
D=20cm, f=1600mm、中央遮蔽の直径40mm、5mm幅の十字スパイダーのケースと、
アンチスパイダーマスクを付けたケースに関するExcelによる計算結果です。
横軸の目盛は、焦点面での回折像の大きさの単位でμm、縦軸は回折像の光の強度で、
20cm無遮蔽望遠鏡のときの強度=1.0を基準にしています。この図はスパイダーの回折
が現れる焦点面のx軸方向の結果を示しています(y軸方向も同じ)。縦軸のスケールmax=1.0
では中心付近以外の強度を表現できないため、スケールmax=0.01の図を横に付けています。
図中に表示されている等級は、光の強度を等級に換算したもので換算式は
A=光量(%),B=1÷(A/100)とするとき、等級=2.51188×log Bを使用しました
(月刊天文1994年7月号のP.55より)。

注目点は、アンチスパイダーマスクでは回折像の中心から35μm以下では回折像が
スパイダーの場合より明るくなるが、35μm以上では回折像の光の強度が大部分で
殆どゼロ(等級では11〜12等級以下)になっていることです。
つまり、星像は肥大化するがスパイクは途中から見えなくなることを示すという結果に
なりました。

■45°方向も計算して、結果のイメージを描きました。


今回は1mm格子による近似計算でしたが明らかにマスクの効果は現れていると思います。



11月26日(土)
昨日木星を見たとき、5×パワーメイト+ブランドン32mm(倍率約200倍)はアイレリーフが
長いので内臓のバーロー(1.7×)+ブランドン12mm(倍率180倍)よりも見やすいです。
一般向けの観望会ではパワーメイトを使った方がよいかもしれません。
      

クエスター付属のブランドンアイピース
下の右2つはクエスター付属のアイピース(ブランドン24mmと12mm)。QUESTAR BRANDON
と書かれ、先の方にネジが切ってあります。これはクエスターの接眼部がねじ込み式のためです。
ねじ込み式ですが通常のアメリカンサイズのアイピースも使えます。
下の左端はK光器から購入したブランドン32mmです。

通常のアメリカンサイズのアイピースを使うときは2か所の黒いネジで止めます;


11月25日(金)
ニュートンの反射望遠鏡レプリカのアイピースホルダー(31.7mm用)をオーブン粘土で作り
暫定的にゴム輪で付けてみました。付けているアイピースはナグラー7mmです。
   
倍率は約20倍です。これで風景を見ると82度の視野全体が見渡せます。
35mmという小口径ですが見え方はかなり良いです。
視野の一部ですがスマホで近くの電柱の写真を撮ってみました。


D=35mmのニュートン反射は望遠鏡としてはかなり小さいですが、ネットにはもっと小さな口径の
ニュートン反射がありました。これはもうミニチュア望遠鏡です。
どちらも「The Smallest Newtonian Telescope in The World」と謳っています。
D=22mm, f=81mmのドブソニアン;
http://zeca.astronomos.com.br/astronomia/smallest.htm
D=19mmの反射望遠鏡
https://www.youtube.com/watch?v=NJplVw2iz0g

暗くなると雲が少し出てきましたが木星が見えていたので最初はTAL-65、
次にクエスター3.5をベランダに出し、食事前に少し観望しました。
 

11月24(木)
所有している(一部は所有していた)海外天文書です;

この中の多くの本は必要な時に関係する箇所を読むといって程度で、隅から隅まで熟読した
本はごくわずか(3冊のみ)です。この3冊について簡単な紹介を
私のレポートに「海外天文書紹介」として追加しました。

マクストフ望遠鏡の種類について
ベースの光学系として何を採用するかにより種類が決まります。
ベースとなる光学系にはニュートン式反射の他に、
 ・1672年にフランスのカセグレンが設計したカセグレン式反射望遠鏡(副鏡が凸面)
 ・1663年にスコットランドのJames Gregoryが設計したグレゴリー式反射望遠鏡(副鏡が
  凹面。正立像が得られるのが特徴)
があります。
以上の2つをベースにした「マクストフは下記になります;
マクストフ・カセグレン(Maksutov-cassegrain)又はカセグレン式マクストフ
 →カセグレン式望遠鏡のマクストフ版(これは更に、副鏡のタイプによりグレゴリー型
 ルマック型があります)
 ・グレゴリー型マクストフ・カセグレン
  →メニスカスレンズの第2面をメッキして副鏡にしている。1957年にアメリカの
   John Gregoryが考案(グレゴリー式望遠鏡のグレゴリーとは時代も国も別の人)。
 ・ルマック型マクストフ・カセグレン
  →メニスカスレンズと違う曲率で副鏡が設計してあるタイプ
 (11/26追記)Questar望遠鏡は上記のどちらのタイプでしょうか?
     →メニスカスの裏面を副鏡にしていますが、副鏡部分を非球面にしている
             ということのようです。
       "Cumberland Optics who has been making the optics for Questar
       since the very early 1960's which is a Gregory type design aspherizes  
       one of the surfaces of the Mak. optics they produce to address this issue
       and better correct the wavefront vs an all spherical system.(cloudy nightsより)"
マクストフ・グレゴリー(Maksutov-Gregorian)又はグレゴリー式マクストフ
 →グレゴリー式望遠鏡のマクストフ版。副鏡が凹面。メニスカスレンズの向きも逆。
  正立像になる。LOMO社のAstele 60はこのタイプです。

上記で、17世紀のJames Gregoryと20世紀のJohn Gregoryという同姓の人が登場するので
話がややこしくなり混乱を招きかねません。2つを区別して使い分ける必要があります。
@グレゴリー型マクストフ・カセグレン
Aマクストフ・グレゴリー又はグレゴリー式マクストフ

Cloudy Nightsでも下記のようにマクストフ望遠鏡のタイプについて混乱があると言っています。
Most folks confuse Gragorian Maks with the more common John Gregory variant
which includes such notables as AP Mak, Meade Mak and most Chinese Maks,
these all have aluminized spot secondaries.
The Gregorian is different, the meniscus is located outside the primary focus and
it is oriented in reverse position, meaning that from outside you will see a convex
corrector.
The only practical advantage of Gregorian Mak is the upright image that it produces,
this makes them suitable for spotting scope in smaller apertures with long focal length.
The only commercially available Gregorian Mak was 4” TEC, available a little over 10
years ago, it was offered as spotting scope

→ここで、TECが4インチのマクストフ・グレゴリーを作っていたとあり写真も載っています(上の
リンク先)。知りませんでしたがLOMO以外にもマクストフ・グレゴリー望遠鏡を作っていたのですね。

11月23日(水)
4cm卓上反射の写真。左の写真の鏡筒は短い方は南会津のペンションにあるエイコーの反射。
7月末にペンションに泊まったときに並べて写真を撮りました。エイコーの4cm反射は60年近く前に
私が持っていたものと多分同型だと思います。鏡筒が長い方は私が持っているもの。反射にしては
筒が異様に長いのが分かります。
右の写真は4cm反射鏡筒をTAL-65の卓上赤道儀に載せたものです。ベランダから月を見るのに
ちょうど良い。妻からはクエスターがあるのに何で玩具のような望遠鏡を持つ必要があるの?と
言われます。
 

■私のレポートに、「アナログ天文測定器(ファイラーマイクロメーター)」を追加しました。

11月22日(火)

D.D. Maksutovの1944年の論文
 New Catadioptric Meniscus Systems, Journal of the Optical Society of America
を見ていると、マクストフ望遠鏡の例としてハーシェル型が載っていました。この型式だと
焦点距離が短くできそうです;

この型式の望遠鏡について関係する文献として下記がありました。
Wright, Franklin B., "The Maksutov Lens Applied to Herschelian and Newtonian Telescopes",
in Volume 3 of "Amateur Telescope Making"
実際に作ったのでしょうか。興味あるのでこの本(中古)を注文しました。

11月21日(月)
MTFカーブから見た無遮蔽と中央遮蔽の望遠鏡の違いについて


MTFカーブの縦軸は「対象のコントラスト」、横軸は「対象の模様の細かさを表しています。
図解 MTFの話」にその考え方を説明していますが、簡単に言えば、MTFカーブは
天体望遠鏡で細かい対象を見るほど対称のコントラストが低下する、ということを表しています。
ここで、対称の模様が細かいとか荒いとかは「明暗のバー」の繰り返しの間隔で決まります。
一定間隔での繰り返し数を「空間周波数」と言います(詳細は「図解 MTFの話」参照)。
下の図は、@20cm屈折、A20cmで中央遮蔽34%no反射、B12cm屈折のMTFカーブを
描いたものです(いずれも無収差の完全な望遠鏡とします)。
横軸の単位(cycle/秒)は、1秒角の間に明暗が何サイクルあるかを示しています。


 いずれのカーブも横軸を右に行くほど(すなわち、細かいも夜を見るほど)コントラストが低下します。
グラフの下に▲で書いてあるものは具体的な天体での空間周波数のおおよその値の例です。この例
では木星の赤道縞が最も空間周波数が低く、アルプス谷のリルが最も高くなっています。
20cm屈折@と20cm反射AのMTFカーブを見比べて下さい。すぐ分かることは、空間周波数が低い
ところから中くらいまではAの反射望遠鏡は@の屈折望遠鏡に比べてコントラストが低くなっていると
いうことです。これらの周波数帯域は、星雲星団から惑星の主な模様を観察する倍率に対応しています。
次に、20cm反射Aと12cm屈折Bを比べてみて下さい。これを見ると低から中の空間周波数では、
ほぼ同じカーブになっています。つまり、20cm反射と12cm屈折は低倍率から惑星の模様を見る中倍率
位まではコントラストに関しては同程度ということです。
 つまり、星雲星団から月の全景や惑星の主な模様の観察では、屈折望遠鏡が見え方のコントラストでは
断然有利ということです。中央遮蔽のある望遠鏡は、低から中までの空間周波数領域では無遮蔽の望遠鏡
(屈折、ハーシェル式反射、シーフシュピーグラー)にコントラストで負けます(注)。
   (注)中央遮蔽率が小さくなるとコントラストの低下は改善します。そのため。昔から惑星用の
      反射望遠鏡は中央遮蔽を小さくした(20%程度)作りになっていました。
 一方、アルプス谷のリルのような細かい模様を見る場合は、空間周波数が非常に高いのでコントラストは
低下しますが、この周波数帯では反射望遠鏡Bの方が屈折望遠鏡@よりコントラストが高くなります。
 以上、屈折望遠鏡と中央遮蔽のある望遠鏡の違いをMTFカーブという観点から比べましたが、
これ以外にも比較する観点があります。

11月18日(金)
レンズの評価基準としてよく使われるλ/4はレイリーのクライテリオンと呼ばれ現代でも使用されて
います。λ/4の根拠について書いてある本は意外にも見たことがありません。そこでその理由について
調べたくてそれを提唱した19世紀の英国の科学者レイリー卿の光学に関する論文(注)を読んでいると
その中でハーシェルについて次のような記述がありました;
(注)Scientific Papers VOL. I. 1869- 1811 .

John William Strutt Baron Rayleigh

“The diminution of star-disks with increasing aperture was observed by W. Herchel ;
・・・unfavourable influence of the central rays upon resolving-power was well known to
Herschel, who was in the habit of blocking them off by cardboard stop.
(望遠鏡の開口の増大による回折像の縮小はW. ハーシェルにより観測されました。
分解能に関する中央の光線の好ましくない影響はハーシェルも良く知っていました。
彼は厚紙で中央部分をブロックする習慣がありました。)
→ハーシェルがハーシェル式望遠鏡で無遮蔽にしたのはミラーの反射率低下を防ぐためで
 別に無遮蔽望遠鏡を目指したのではないということです。むしろ二重星観測など高倍率では
中央遮蔽があった方がよい(これはMTFカーブからも分かります)ということを経験的に
知っていたようです。MTFとは何かについての概要は「図解 MTFの話」を参照下さい。
→単純に、近軸光線を塞いだ方が球面収差が改善するということかもしれません(11/24追記)。
Neil English(注)著の"Chronicling the Golden Age of Astronomy ?A History of Visual Observing
from Harriot to Moor ー(天文学の黄金時代の年代記 ーハリオットからムーアまでの眼視観測
の歴史)の「第8章 ハーシェルの遺産」の中には次の記述があります;
「ハーシェルは倍率を上げるとディスクのサイズが大きくなるが、望遠鏡の有口径を小さくする
とディスクが拡大することに気付きました。一方、ミラーの中央部を覆うとそれがないときに比べて
ディスクが小さくなる。・・・」

■回折像の写真
下記ツイッターにシリウスBと共に回折像が撮影されたのが載っています;
https://twitter.com/RollerRacers
回折像の撮影はかなり難しいと思いますが回折像をこれだけ明瞭に撮影したものは始めて見ました。
良くこれだけきれいに撮れたものだと関心します。ここに載っている回折像を見ると色がついていますが
これは回折像が光の波長によりサイズが少し変わる為です。
ヘキサゴナルマスク(六角マスク)を使用して8cmでシリウスBを撮影した像は、このマスクの有効性
を明瞭に示しています。また、8cmで撮影した回折像ではシリウスBが第7回折リング上に見えますが
これは計算上の結果と完全に一致します。


11月17日(木)

ニュートンの反射望遠鏡のレプリカの接眼部を外してみました(下にある小さい物)。

これを見ると単レンズのようです。実際このアイピースで風景を見ると視野は30度+α位で
良く見える範囲はその半分位しかありません。ニュートンが反射望遠鏡を製作した時代、
ラムスデンやハイゲンスというアイピースはありませんでした。そのためこのレプリカは
あえてシングルレンズにしているのではと思われます(忠実に復元された?)。当時の見え方
を体験したり机の上に飾っておくにはこれで良いのですが、現代のアイピースでどこまで見えるか
試してみたくなりました。下の写真はテレビューのパンオプティック19mmを暫定的に付けたもの
です。これで倍率8倍位ですがかなり良く見えました。主鏡は良いようです。接眼部をもう少し
安定した物にしてみようと思います。


11月16日(水)
パリ五輪のマスコットは「フリジア帽」がモチーフとのニュースがありましたが、この「フリジア帽」は
19世紀のアマチュア天文家スミス提督の本の中で、かに座のM67星団の例えとしても登場します。
フリジア帽とは、古代ローマに起源をもつ三角帽のことです。

フリジア帽

アドミラル・ウィリアム・ヘンリー・スミス著 A CYCLE OF CELESTIAL OBJECTS には次のような
記述があります(この本は天体観測の古典と呼ばれています)。
「M67は蟹の南の爪の根もとにある、星は多いが密でない散開星団;オリオン座β星から西北西に
プロキオンを通るラインで、うみへび座ε星の約5°北の位置にあります。それは9等から10等の
星の集りでフリジア帽の形をしていて、それに三日月状のはぐれた星々が続きます。・・・・」
M67の写真を見ると確かにフリジア帽を逆さにしたような形をしています。
尚、スミス提督は、大英帝国海軍引退後に5.9インチ屈折望遠鏡などで天体観測を始めた人。
(定年後に私設の天文台を作り天体観測をして過ごすというのは理想ですね。)



11月15日(火)
先週末(金曜から日曜)に「星と自然のフェスタ in こうみ」に行ってきました。金曜日は10時前に
出発し14事頃上信越自動車道の横川SAで休憩していたところ少し先の軽井沢インター手前で
トンネル事故があり、下り線は通行止めになりました。約2時間SAで待ち、その後上り車線へ移動
して松井田妙義ICから一般道で宿泊のホテルに向かい、着いたのは大幅に遅れて19時でした。
ホテルは佐久市内なので星祭りの会場へはさらに1時間以上かかります。それで金曜日は会場へ
行くのをあきらめました。次の日は10時過ぎに会場に到着し、15時頃まで知っている人と会ったり
して過ごしました。今回は家族出来ていたので長い時間一人で話し込むのは出来ず夕方には
佐久のホテルに戻りました。翌日の日曜は帰宅途中に世界遺産の富岡製糸場を見学しました。
結局、天気が良かったにも関わらず土曜日の昼間しか会場にいませんでした。


11月1日(火)
先月の21日〜23日に福島県いわき市で開催された「第6回Deep Sky Camp in 鬼ヶ城」に
参加してきました。下の写真は会場の横に並んだ望遠鏡群です。
66cmドブ、55cmドブ、30cm屈折など大口径が集まりました。

当日の様子は井上さんの下記レポートに詳しく紹介されていますので参照してください。
第6回Deepsky Camp in 鬼ヶ城

【参考】Deep Sky in 鬼ヶ城の井上さんの過去のレポートは下記です;
第1回Deep Sky in 鬼ヶ城(2019年4月)
第4回Deep Sky in 鬼ヶ城(2020年10月)
第5回Deep Sky in 鬼ヶ城(2022年4月)
尚、
   第2回は2019年10月に実施。
   第3回は2020年1月に実施。

8月29日(月)

最近は天文関係でもTwitterを利用する人が多いようですが、私は時々他の人のを見るだけで呟くこと
はしていません。最近あるTwitterで中央遮蔽の焦点内外像で中心に明るい小さなスポットが見えるのが
話題になっていましたが、この小さなスポットは「Poisson's spot(ポアソンの輝点)」と呼ばれ、
Star Testing Astronomical telescopesのP.21の下から6行目から次のページの11行目までに説明が載って
います。アラゴスポット(Arago Spot)とも言われます。点光源からの光を球状 の障害物に照射した際に、
その影の中心部分に現れる輝点のことです。

7月31日(日)
LOMO Astele 60 の内部を見てみました。
鏡筒と主鏡部分を外してみると細長いバッフルが見えます。主鏡は接眼部分と一体化しています。
鏡筒から外された接眼部分を覗いて見ると正立像であることが確認できました。これは接眼部分に
ハーフペンタプリズム(正立像を45度の向きに変えるプリズム)が組み込まれていることを示してい
ます。


分解した鏡筒の後ろから前方を覗いて見ると、副鏡バッフルと3本のスパイダーが見えます。
通常、マクストフカセグレンの副鏡バッフルはメニスカスに張り付けてありますが、LOMOのマクストフ
グレゴリーは副鏡バッフルを支えるためにスパイダーを使用しています。また、バッフルの中央には
副鏡が見えます。



6月25日(土)
Cloudy nightsのQuestar ForumにQuestar 5の情報が載っていました。
"QUESTAR 5 INCH model pricing will be available later in 2022. Two OTA versions
at this time, No EQ mount, OTA only."
と、今年終わりにQuestar 5の2つのバージョンの鏡筒価格が公表されるそうです。
Questar 7については、
"wait times for new Questar Sevens are quite long these days. "
とあるようにまだ当分待つ必要がありそうです。

6月6日(月)
先週金曜日の夕方から土曜日の午前中まで福島県田村市の星の村天文台星まつりに
行ってきました。会場の駐車場に着いたときはすでに車が多数あり、駐車場の一番端
付近にタープとテントを張りました。望遠鏡は小型(クエスター3.5、TAL65反射、LOMO
Astele60マクストフグレゴリー)をタープの前に展開して夕方は月、夜は夏の星団などを
見ました。特に南天の空が非常に良く、さそり座やいて座の星団等が良く見えました。
また、双眼望遠鏡でパンスターズ彗星を見せてもらいました。土曜日の午前中はクエスター
で太陽を見ていました。

星ナビ7月号の星ナビひろばに「第5回DeepSky観望会 in 鬼ヶ城 報告」が載っています。

5月27日(金)
最近入手した天文書です;
・Paul Couteau著 L'observation Des Etoiles Doubles Visuelles, 1978, FLAMMARION, Paris.
・Robert G. Aitken著 The Binary Stars, 1964, Dover.
・William Tyler Olcott著 A Field Book of The Stars, 1914, G.P. Putnam's Sons.


こちらは最近入手した数学書とソフトウェア関係の本です;
Kiyoshi Oka著 Sur Les Fonctions Analytiques de Plusieurs Variables, 1961,Iwanami Shoten
→学生時代に読んでいた岡潔の多変数複素関数に関する論文集(仏語)。古書店にあった
ので購入しました。


・Patrick Cousort著 Principles of Abstract Interpretaion, 2021, MIT Press.
・Xaver Rival and Kwangkeun Yi著 Introduction to Static Analysis, 2020, MIT Press.
→これまで抽象解釈の纏まった本は殆どありませんでしたが、ようやく本格的な
テキストが2冊出版されました。


5月10日(火)
6月3,4,5日の開催案内が公開されました(5月8日)。
その後、出店ブース(メイン会場)一覧、会場地図が追加されました;
星の村天文台☆星まつり - 田村市ホームページ (tamura.lg.jp)

5月7日(土)
4月29日〜5月1日に第5回Deep sky 観望会 in 鬼ヶ城に行ってきました。
観望会の様子は井上さんのブログに詳しく報告されていますので参照してください。
https://skymusic-fun.blog.ss-blog.jp/2022-05-02

2月15日(火)
ニュートンの反射望遠鏡のレプリカはこれまでいろいろ作られてきましたが、現在では入手困難な
ものが多いです。
Replicas of Newton's telescope
この中に、フランクリンミント(王立協会とコラボ)が過去に販売していたニュートンの反射望遠鏡レプリカ
があります。これはニュートンの望遠鏡の忠実なレプリカというよりも鏡筒のデコレーションから
見てデスクに飾る置物のようなものですが、ebayを探してもなく入手困難なレア物です。
最近気が付いたのですがこれが先月ヤフーオークションに出品されていました;
https://page.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/e1033601818
出品者はこれが何かわからずに出したようですがかなり安い値段で落札されました。
早く見つけていれば入手出来たかもしれないのに残念です。海外を探しても中々見つからない
レア品がヤフオクに出ていたというのは意外でした。

2月10日(木)
<40mm卓上ニュートン反射のリニューアル>

 この望遠鏡の良く見えない理由は主鏡の非点収差にあり、このままでは全く使えない
望遠鏡です(この状態であえて使うとすれば、60年前の望遠鏡がいかにひどいものかを実感
してもらうことくらいでしょうか)。
 これを見えるようにするには鏡を正常な物に入れ替えるしかありません。そこでエドモンドの
5cmf10の1/4λ球面鏡(反射強化アルミナイズ)と12.7mmX17.96mm楕円型1/8λ斜鏡を購入
して主鏡と斜鏡をそっくり入れ替えました。これによりこの玩具望遠鏡は口径約4.6cmf10のニュートン
反射になりました。主鏡セルは望遠鏡の筒の両端についていた金属枠を利用しテープで固定。
斜鏡は元の長方形の斜鏡の上に両面テープで貼り付けただけです。
 外観は60年前の玩具望遠鏡ですが、中身は現代の標準的な見え方のニュートン反射です。
この望遠鏡を改造したことを説明しなかったらその見え方にビックリするでしょう。アイピースは
元のアイピース(40×と80×)をそのまま使用していますが良く見えます。
  
↑エドモンドの5cm球面鏡を  ↑鏡筒を少し短くし鏡を入れ替えた状態   ↑接眼部から斜鏡を見た所
 金属セルに入れた所      卓上三脚はMAKSYの三脚を使用。


2月8日(火)
久しぶりにSky&Telescopeを見たら80ページと薄っぺらになっていました。内容も
以前と比べて薄くなったようです。国内の天文誌も読むところが殆どなく天文雑誌
の衰退は世界的傾向のようです。


1月11日(火)
先週土曜日は今年初めてのすばる天文同好会定例観望会でした。
天気は快晴で素晴らしい観望日和になりました。屋外は寒いので
こたつを出して観望しました。クエスターはこたつの上に置いて観望
するのに適しています。こたつの暖房は、200Wの電気カーペットと
80Wのテーブルヒーターです。電源はJVCのポータブル電源で約3時間
持ちました。外気温0度でも十分暖かくなるのが分かりました。
こたつの下に敷いたものは、グランドシート+銀色の省エネシート+
電気カーペット+電気カーペットカバー。こたつに掛けたものはこたつ用
毛布+こたつ布団です。




修理依頼していたツァイス双眼鏡10×40B T*P*が修理完了して戻ってきました。
レンズ、プリズム総入れ替えしたので新品のようになりました。修理代は、銀座の
レモン社で並行輸入品として購入した時と同じ位でした(中央軸のゆるみ直し含めて
約12万円)。早速、観望会でこたつに入って仰向けになりアンドロメダ銀河、プレアデス、
二重星団、その他の散開星団などを眺めました。こたつで星見はいいですね。